||   I searched FOR MY STAR / 自分の星を探して   ||


小さいころ、ぼくは夜、草原に仰向けに寝ころがるのが好きだった。夜空の星たちに次々と話しかけ、あの星のどれかひとつがぼくのもので、心の友になってくれたらどんなにいいだろうと思った。
   最初にぼくが選んだのは北極星だった。北斗七星の延長線上にある北極星は、子供には一番見つけやすいものだったからだ。けれどあとで、ぼくの星はひとつところにじっとしているやつじゃなく、動く星がいいと思いなおした。それに、ぼくが北極星を自分のものにしてしまったら、海で航海している水夫たちが針路を決めるのに困るだろう。

次に目をつけたのは、白鳥座の真ん中にある、とびきり大きなふたつの星だった。ほかの星はみんな白くみえたのに、このふたつだけは、明るいブルーと金色の光を放っていた。この星たちは、まるで双子の宝石みたいだった。だが、ふたつのうちどちらかに決めようとしたとき、ぼくはふとためらった。この星たちはいつもふたつ一緒にいるのだから、どちらか片方だけを取りあげてしまうのはかわいそうだと思ったのだ。
   オリオン座の三つ星もいいな、と一瞬ちらりと思ったけれど、ぼくは猟師じゃない。空で振りたてた尻尾に鼻面を押しつけている、大犬座のシリウスもそのままにしておくことにした。

最後に、一番お気に入りの牡牛座のすばるをふり仰いだ。彼らはまるで舞踏会の支度をしているエレガントな淑女のように、うっすらとしたブルーの雲におおわれていた。けれど、このすばるの星団を離れ離れにするなどということが、いったい誰にできるだろう?

この遊びはぼくに、夜空についてたくさんのことを教えてくれたけれど、ぼくは大人になりかかっていた。自分の星を持とうという考えは、ぼくのなかでしだいに薄れてゆき、最後には、どれかひとつを選んだかどうかも思い出せなくなってしまった。人々は、「星」という言葉の意味を、ぼくが考えているそれとはまったく違うのだと言う。ぼくは彼らの言葉をなかば信じていたが、そんなある晩、胸の痛みと不安にかられ、ベットに横たわろうとした。ぼくの心はいくつもの心配で沈みこんでいた。ふらふらとした足取りで、ぼくは窓の外を眺めた。深夜の空に、厚い雲がたれこめていた。星はひとつも出ていなかった!

星のない世界を思い、ぼくは身震いした。水夫たちを導いてくれる案内人も、目のくらむような美しい宝石も、地平線にむかって弓を引く猟師も、天の舞踏会場で華やかな香りを撒き散らす愛らしい淑女もいない世界。だが地球の周囲の大気がひどく汚染され、都会の光があまりに強すぎるため、今ではほとんど星を見られなくなっている人々がいる。子供たちが大人になるころ、彼らは真っ暗な空を見上げて、「昔はあそこに星があったの?」と聞くようになるかもしれない。

彼らのために空を取り戻そう、それも今すぐ、手遅れにならないうちに。そしてぼくは最後まであきらめず、自分の星を探しつづけよう。ぼくの星は純潔という引き出しの奥深くに、不思議というスカーフにくるまれて眠っているのだ。その星が空にあいたどの穴にあてはまるかを知るためには、地図が必要だ。それはきっと、小さな星にちがいない。だがこの地球上には50億の人間が住んでいて、みんな空を必要としている。きみの星を探して、空高く放ってあげよう。きみはまだその星を持っているんだろう?